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ハワイの遅い朝に、アロハの香り。憧れはフレンチプレスの香りととに

東京駅から新幹線で小一時間、高崎駅につく。軽井沢にはよく行くけれど、新幹線が出来てから、高崎で降りるのは久しぶりだ。見違えるようなビル群。モダンなショッピングセンター。コンコースを行き交うお洒落な家族連れや若者たち。もう、達磨や峠の釜飯ばかりではない。時代は令和なのだ。だから、今日は、駅前のハワイで待ち合わせをしている。駅を出ると、目の前にあらわれたのは、ハワイというよりも西海岸のテイストを感じさせるシンプルなデザインのカフェ。ガラス越しのサーフボード、そして、あのなんとも魅力的な卵色のサイン、「エッグスシングス コーヒー」だ。

エッグスシングスといえば、パンケーキがあまりにも有名だけれど、起源は1974年、ハワイの地元の夫婦が始めた朝食がメインのカジュアルレストラン。漁師や若者たちなど、ハワイに多かった時間に不規則な人たちにしっかりボリュームのある朝食を食べて欲しいという想いからはじまったという。その後口コミでハワイ全土に広がり、日本には2010年の3月10日に上陸した。

その時の理由も、朝食を食べなくなった日本人に、きちんと食べてもらいたいという想い、朝食文化を広げていきたいから。素晴らしい信念。ちゃんとしている。そのエッグスシングスが、初めて展開する新しいスタイルが「エッグスシングス コーヒー」だ。店内が一杯だったので、テラス席で待っていると、エグッスシングスコーヒーの西澤さんが笑顔で迎えてくれた。

ハワイアンスイーツとフレンチプレスの豊潤なハーモニー

街のカフェですっかり慣れたカウンタースタイルに、落ち着いた木目調でしつらえた店内がアロハの雰囲気を醸し出している。メニューボードを見ると、自慢のパンケーキが３種類。エッグベネティクトなど、しぼりこまれたハワイローカルフード。ショーウインドウには、マサラダなどのカジュアルなハワイアンスイーツが並んでいる

「エッグスシングスコーヒーではパンケーキはもちろん、ドリンクとローカルフードにこだわりを持っています。特にコーヒーについては、100%コナコーヒーをお出ししています。ハワイの希少なコーヒーであるということと、このコーヒーの香りを充分に楽しんでいただきたいなというときにフレンチプレスの方が香りがダイレクトに広がったり、機械で淹れるのとでは香りや味だったり違いがでてくるので、注文いただいてからから抽出するスタイルにこだわっています。」

100％コナコーヒー。それだけで貴重だ。フレンチプレスで抽出をしているので、淹れるのに5分ちょっとかかる、手間もかかる。でも待つ甲斐は間違いなくある。飲みやすく、まろやかさの中にフルーティな香りとコクが漂い、パンケーキとの相性も抜群だ。希少なコーヒーをゴクゴク飲める。なかなかない贅沢だ。

「フレンチプレスで最高の豆を使って入れるのですから、グラインダーにもこだわりました。シアトルのバラッツアというメーカーのもので、サイズに合わせてボタンを押すだけで、最適な引き目でその数量が正確にひかれるから。いつも味が違うお店ってなかなか来たくないと思うんですけど、安定した味を提供できるというところが素晴らしい。それに、すごく小さくてコンパクト、スタイリッシュなので、お店の雰囲気を崩さないし、このお店の内装と非常にフィットしていますね。」

ふと客席を見渡すと、親子連れやビジネスマン、学生など本当にいろいろな人が、それぞれの時間をしっかりと楽しんでいる。アロハの朝にひたりながら。その中にひとり、不思議な形をした箱を大事そうに抱えて帰るお母さんらしき人がいた。なんと、あの富士山のようなふわふわなクリームごとお持ち帰りができるのだ。

「エッグスシングスではまだできていないテイクアウトができるようになりました。特にパンケーキは、持って帰ったときもできる限りお店で食べる雰囲気も再現したくて、ちゃんと5枚お花形に並んでエッグスシングスだってわかるようなボックスをつくりました。お花形みたいなカップに入れて広げるとパンケーキができるんですよ。カフェは生活の一部であり、そこに自然にあって、気軽に行ける場所であってほしい。そして、その人の生活の一部になって欲しいなという想いがあります。高崎でも本当に幅広い方が来てくださっているので、そういう皆さんの生活の一部になれるお店を目指したいなと思っています。」

高崎の街を、アロハの微熱とコーヒーの香りが心地よく浸していく昼下がり、幸福な時間の意味がなんとなくわかる気がした。