幻のアイランダーたちに捧ぐ
永遠のコーヒードリーム

北千住といえば、江戸時代から日光街道の日本橋からの1番目の宿場町として栄え、今も昭和レトロがその姿をとどめる味わい深い街。地図で見ると、荒川と半円に蛇行する隅田川に囲まれ、まるで島のようにも見える。西から南と東から北の夢や文化をつないだ要だった理由がよくわかる。そして、令和のラインから3年、その島の真ん中に、日本初の東ティモール専門コーヒーショップがオープンしたという。北千住の新しいアイランダーたちは、コーヒーでどんな夢を見るのだろう。

巨大なプラットフォームに生まれ変わった北千住駅に戸惑いながら、商店街らしき場所を探す。懐かしい感じの、「宿場通り」のブリッジ。ひっそりと「千手宿本陣跡」の小さな石碑もある。温かな懐かしみの空気を潜ると、通りの角に小さく洒落た「LUSH-COFFEE」がある。愛らしい犬をモチーフにしたキュートさに微笑みがそよぐ。
通りに面した窓越しに、コーヒーを入れる人影が見える。店内カウンター３席、テラス席４席だが、ひっきりなしにテイクアウトしていく方の笑顔が、この店の魅力を約束してくれている。早速、コーヒーを頼み、オーナーに夢の理由を聞いてみることにする。

「まず、高校3年生の時に、東ティモールに渡航する機会があったのですが、そこで実際の現地の方たちが作っているコーヒーに触れてみて、そのクオリティはもちろん、農園の人たちの熱意や誇らしいような表情を見て、実際すごく感動しました。同時に、消費国側で、本当にコーヒーに対して非常に多くの労力をかけて作っている生産者がいるにもかかわらず、まだまだコーヒーに対しての価値観っていうのが向上しきれていない課題を感じました。その後、コーヒーのサークルを作ったり、再度東ティモールを訪れながら、この素晴らしコーヒーを適正な価格で届けることで、持続可能なお金の流れをつくれるといいなと思い、ロースターとしてビジネス始めました。さらに、この品質を体験していただき、発信していくために、この店を開きました。」そのためのオーナーのこだわりは、もちろん、コーヒーマシンにも及んでいる。

「東ティモールの豆の魅力をあますことなく再現できる、しかもそれほど広くないスペースで、規模も大きくないビジネスの中で良いパフォーマンスを発揮できるエスプレッソマシンを探していました。なかなか見つからず、プロのバリスタに相談したところ、SANREMOのZoe Compactがいいとアドバイスをいただきました。しかも、それを扱っているのがブルーマチックジャパンさんというコーヒーのプロフェッショナルだから信頼できると。私たちが扱っている東ティモールの豆というのは、比較的中深煎りぐらいでお出しさせているエスプレッソなのですが、しっかりとした圧力をかけることで、東ティモールの豆特有のオイリーな部分や、由来する黒糖らしい甘さが表現できている。そこを邪魔することない抽出ができているので、私たちの豆には非常に合っていると感じています。使い勝手も非常に良く、店舗に適したサイズ感で、幅を取りすぎることもなく、作動性もスムーズで、スチームの力自体も十分で、非常に良いなと。本当に良いパートナーです。」
こうして再現された東ティモールのコーヒーの魅力は、さらにいろいろなものを繋いでいく。

カウンターやワゴンには東ティモールの旗や、現地の織物などが飾られている。言葉は一部しか語れず、物語はまだ深く、広く、続く。もうひとつ、地元、北千住であることも重要だ。「東ティモールを広げるというのももちろん、この土地自体も盛り上げたいという思いも強いです。実際、近所の皆さんの憩いの時間に少しでも役立てると良いですね。私自身うれしいのは、東ティモールというのが知られてきてるという実感もあります。最初はやっぱり表に旗などを掲げていると、「何の国なんだろう」だとか「そもそもこれアフリカじゃないの」とか。本当はアジアなんですけど。。最近は常連の方々とその集落名を挙げて「ここの集落のコーヒーちょうだい」というふうな。まさか千住で東ティモールの集落名が出るとは思わないので。そういった認知度の拡大というのができているので、そこは非常に良くなってると思います。」
淹れてもらったコーヒーを、香り、口に含む。若く、まっすぐな強さが
心地よく、時を満たしていくのを感じる。